「20代で大病院の看護師から特養に転職して得たもの・失ったもの

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得たもの

ナースコールを取らなくてよくなった

基本的にNsコール対応は介護士さんが行ってくれます。無くなって初めて気づきましたが、Nsコールのストレスは非常に大きかったです。これが無くなっただけで、ストレスが段違いです。その分介護士さんがストレスたまっているので、余裕があれば取ってあげましょう。とっても感謝されます。

医師に気を使うストレスがなくなった

医師が常駐していないため、顔色をうかがう場面がほぼなくなりました。資格的な差から、医師がどうとも思っていなくても、私たちから話しかけたりするのはやはり気を使うものでしたが、特養の場合は基本的に週2回が来荘ペースなので、自分のペースや裁量で業務を進めやすくなりました。
後述しますが、同じような状況に私たち看護師も介護士さんから思われているところはあるので、そのあたりは逆に気を付けなければいけない部分ではあります。

利用者さんと長期間じっくり関われるようになった

特養は長期入所の方が多く、一人ひとりと深く関わりながら、その人の生活や変化をじっくり見守ることができるため、病院外の看護師の仕事としてよくメリットにあげられます。
ただ、個人的にはこれは違和感があり、もちろんそういった関わりをしたくて特養に来る看護師もいるかもしれませんが、特養に来る看護師の多くはそういったことを求めていない傾向にあるのではないかと考えて居ます。そのためこの内容に関してはそこまで得られたものとしては正しくないかもしれません。
もちろん私自身も、利用者(患者)に対してそういったことを求めてはいないので、一応こちら側に分類しましたが日頃の業務で「この人との関わりも長くなったなあ、だいぶ最初よりは信頼関係で来てきたな」と思ったことは1mmもありません。
もっと言うと、特養の場合は要介護3以上が入れるため、認知症も多く正常な意思疎通ができない人の方が多いためあまり関係ないと思っています。
本当に長期的な視点で関わりたいのなら訪問看護やもっと自立度の高い高齢者が入所している施設にでも行った方がいいと思います。

普通に働いているだけで評価されやすい

よくも悪く看護師の数自体が少ないため注目を集めやすくなります。さらに若い看護師となるともっと希少価値が高いため、施設側からもある程度大事にはしてくれるでしょう。真面目に仕事をしているだけで周囲から「頼りになる」と評価されやすくなります。もちろん逆もしかり。

介護士に頼られる場面が増え、感謝されることが多い 

これはどういうことかと言うと、病院での医師と看護師の関係がそのまま看護師と介護士の関係に置き換わると言えばわかりやすいかとおもいます。もし医師が何かのついでに採血やルートの確保を行ってくれたら感謝及びびっくり及び恐縮しませんか?
パッド交換や移乗補助など、ちょっと介護業務を手伝うだけで「ありがとう」と直接感謝されることがあり、こちらからしたら当たり前だったり何とも思っていなくても、感謝されることについてはうれしいものです。現場での信頼や評価も上がりやすくなります。
逆に言えば、看護師が病棟で医師のことを話すように、感じが悪かったりポンコツであればそういった言われる対象にもなりやすいため一長一短ではあります。
良くも悪くも、私たち看護師の発言や言動は見られているということです。私は気にならなかったしそれが結果としてうまくいって入社半年で管理職に就任できたことにもつながりますが、威張りたい人(そういう気質の人)は苦労するでしょうし軋轢を生むと思います。

自分の意見や工夫が現場でそのまま実行されやすくなった

規模が小さい分、現場の意見や改善案がすぐに実現されやすいです。
特養のトップは施設長になり、病院では看護部長や院長クラスに置き換わります。そこに直接話をしに行くことはほどんどなかったと思いますが、大病院に比べて規模は確実に小さくなるでしょうから、そういった意味での意見の通りやすさや接する機会は確実に増えます。

同年代が少ないため、影響力を持ちやすく管理職やリーダーに早く昇進しやすい

まだまだ若い看護師の主戦場は病院であり、特養に若くして来る人はそう多くはありません。そういう意味では、ライバルが少ないと言えます。やる気次第ですがキャリアアップのチャンスは病院よりも多いと思います。もちろん、看護師としてのキャリアというよりは社会福祉法人・介護施設としてのキャリアになりますが、そこ部分も就職段階でしっかりと確認することで、入ってから「こんなはずじゃなかった」はだいぶ防げます。
また、若いからこそチャンスもめぐりやすくなってきます。何かキャリアアップの機会があった際にも、「もう私たちは年だから若い人に・・・」という形でチャンスが巡ってきやすいです。
看護師の世界では、女性社会ということもあってかあまり上を目指すことを公言したり狙っていく風潮はありませんが、介護施設でもそれに近い風土はあります。
キャリアを積み重ねたい、昇進したい、管理職になってマネジメントを行ったり給料を上げたい等考えている人にとってはとても挑みやすい世界になっていると思います。

地域や家族と近い距離で関わる安心感が得られた

こちらもよく介護施設で働くうえでよく聞くメリットの一つです。私は特に興味ありませんが。
ただ、地域に根差した施設というのが、特養では目指すべき施設の形でもあり、地域貢献・地域に根差したイベントや関係性を保つ機会が病院よりは多いように感じます。それらのことから、看護師では経験できなかったような経験がしやすいのは特徴です。

医療処置のプレッシャーが減った

ここでいう医療処置とは、私の場合主に超急性期で行う処置のことを指しており、採血や点滴のことを言っているのではありません。
採血や点滴は数こそ多くなくても特養でもあります。
急性期になればなるほど、医療的な処置にプレッシャーはつきものです。やってるときは感じなくても、やめた今考えるとやはり超急性期の看護というのは神経をすり減らしながらやっていたのだと思います。

失ったもの

大病院の肩書きやブランド力

「○○病院勤務」というネームバリューや社会的な信用力がなくなり、転職時や周囲の評価で物足りなさを感じる。
このネームバリューに対して、看護師時代は貴重さに気づきにくかったこともありますが、転職時に履歴書を見せるときや、今までの経歴を語る際の影響力を感じることは多々あります。
看護師の仕事は良くも悪くも数字として表れません。そのため、「大病院=なんかよくわからないけど凄いんだ」という形になりやすいです。もちろん関わりが深まる中で、「こいつ実は大したことないな」ということになるリスクもありますが、そこに通っていた経歴というネームバリューは非常に大きいのだと、病院を出て働くようになってから感じることの一つです。

最新の医療技術や知識に触れる機会

急性期医療の現場で行われるような新しい処置や知識に触れることがなくなり、知識や技術が遅れてしまう不安が出てきますし、転職を迷われている方の中には、こういったことを危惧している人も少なくないでしょう。
実際に大病院から特養に転職した身として言わせてもらうと、特養のぬるま湯にハマればハマるほど、病院時代の経験は死んでいきます。
よほどのことがない限り、一度自分の中の基準を落としてしまうとそこから上げることは難しいです。
特養に転職する際には、しっかりと自分自身の中で対話を繰り返して、本当に病院に未練がないのかを嫌というほど確認してください。
よほどのことがない限り、看護師としてのキャリアはいったん死にます。

看護師として相談できる先輩やロールモデル

特養では看護師自体が少なく、キャリアや悩みを気軽に相談できる相手が周りにはいません。病院時代にしっかりとつながりを作っておきましょう。
まあ今だったらインスタやX等相談できるツールはいくらでもありますが。
私自身の経験も伝えることはできるので、何かあれば連絡をくださればできる範囲でお伝えさせていただきます。

明確な評価制度やキャリアアップの幅

小規模施設が多いため、昇進や昇給の機会が限定的。頑張りが待遇やポジションに直結しにくい。とはいえ、特養でも大きな法人が運営している場合はしっかりとキャリアプランが描かれていることも多いです。ただし、あくまで介護士が主体のため看護師のキャリアにまで記載されていることは少なく、仮に特養(介護施設)で、上を目指そうと思った場合は看護師以外の職種にも目を向けていく必要があるでしょう。

チーム医療の一体感や多職種連携の刺激

急性期のような大人数で一つの目標に向かって取り組むダイナミズムや達成感、重症患者を前にしたアドレナリンの出るような感覚はほぼありません。

アセスメント能力

看護師としてアセスメントする能力は100%落ちます。
逆に看護師としての基本技術である、採血やルート確保、清潔操作等の技術については、一度自転車に乗れた人が時間がたっても乗れているように、個人的にはそこまで影響ないと思っています。

仕事を分担できるスタッフの多さ・バックアップ体制

特養に関しては、一応看護師としての人員基準的なものはありますが、当然それだけでは全く足りません。ただ、看護師の人件費を考えると余分に配置している特養はそう多くないため、スタッフが少なく、一人で複数の業務を担当することも増え、「自分しかできる人がいない」状況に陥りやすいです。

研修や勉強会などの教育機会

介護施設なので、主役は介護士です。そのため介護士向けの勉強会や研修、資格取得支援等はありますが看護師向けに準備されていることはありません。どちらかというと、介護士向けに勉強会を実施していく立場になっていきます。

同世代の仲間やスタッフとの日常的な刺激

若手が少なく、年配職員ばかりで世代ギャップを感じやすいです。同世代と切磋琢磨できる場面もあまりありません。
ただ、介護士の方は若い人もいますし、当然新卒で入ってくることもあります。あくまで「看護師の同年代」は少なくなるでしょう。

最後に

私自身、20代で特養に転職し、大病院でのキャリアを手放したことを振り返ってみると、結果的には「正解だった」と感じています。

あのまま大病院で働き続けていたら、きっと今よりも年収は100万円単位で違っていたでしょう。でも、その分、夜勤や不規則な生活のストレスで、プライベートや家庭は犠牲になっていたかもしれません。もしかしたら子どもを持つタイミングも逃していたと思います。

今でも、急性期で働く同僚の話を聞いて焦ることもありますし、YouTubeで救命救急の現場の動画を見ると、どこか胸がざわつく瞬間もあります。それでも、今の自分の生活や働き方があるのは、若いうちに特養という選択肢を選び、病院以外の場所で看護師としてのキャリアを積んできたからだと思っています。

大病院で高齢の患者さんと向き合うのは本当にしんどかったですが、今は自分に合った年齢層やペースで、無理なく看護師としてのキャリアを生かした福祉の仕事を続けられています。振り返れば、この選択は自分にとって間違いではなかったと思います。

転職で得たものもあれば、失ったものもありましたが、「どちらが正解」というより、自分が何を大事にしたいかで働き方や満足度は大きく変わると思います。

特養と大病院、それぞれの現場の違いを事前に知っておけば「思っていたのと違った」と後悔するリスクも減ります。ここに記載していること以外でも、「○○はどうですか」「◆についてはどうでしょうか」等何かあればお答えできる範囲で対応させてもらいます。

これから同じような転職を考えている方は、ぜひリアルな声を参考に、自分に合った職場選びをしてみてください。

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この記事を書いた人

総合病院看護師、特養を経て相談支援専門員にキャリアチェンジ。福祉の現場での日常や、転職体験、相談支援専門員としてのリアルな気づきを発信しています。同じ分野を目指す方にも役立つ情報を心がけています。

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