「正直、病棟勤務と比べたら特養なんてめちゃくちゃ楽です。介護業務の多くは介護士さんが担当してくれるし、高齢者相手の看護業務も決して複雑なものではありません。看護師としてのスキルアップ?…特養ではほとんど期待できません。“特養で看護師の能力が上がる”なんて言う人がいますが、正直、それはもともと病棟でかなり楽をしていた人なんじゃないか――そんな風に思っています。」
ここでは、ネットでよく見るやりがいや高齢者看護の奥深さみたいな話ではなく、私自身が特養を選んだ理由と、働いてみて本当に感じたことを、そのまま書いていこうと思います。
なぜ特養という選択肢が浮かんだのか
「夜勤が嫌だ」「生活がしんどい」「そもそもオムツ交換とかやりたくない」
これは現場の看護師なら誰でも一度は考えることです。
実際、私が特養を選んだのは本当にラクをしたかったからです。
病院のような緊張感も、呼び出しも、残業も、とにかく疲れていました。
当時の私は「患者さんに感謝されたい」とか「やりがいが欲しい」なんて気持ちは一切なく、いかに楽に給料をもらって生きていくか、そして仕事以外の時間をいかに充実させるか、それしか考えていませんでした。
転職の選択肢として現実的だったのは、
- 訪問看護
- 給料は良くて夜勤もない
- 看護師としての能力もあげられる可能性がこの中では一番あり
- そもそも看護師として現場(前線)でやりたくない
- クリニック
- 一日の拘束時間長い
- 将来性があまり感じられない
- 企業
- 未経験で採用される自信がなかった
- 老健
- 給料いいところもあって仕事内容も楽そうだが夜勤あり
- 特養
- 夜勤がない(あってもオンコール)
- 医療行為が少なく定時で上がれる
- 介護士主体であり現場で希少性が高い
- 介護業務(オムツ交換や入浴等)も基本的にない
この中で、消去法的に特養を選んだだけであり、「特養で看護をしたい」という思いは1㎜もありませんでした。
特養を選ぶ際に考えたこと
- 人間関係がめんどくさくないか
- 介護業務はどれくらいあるのか
- 将来的に上に上がれる可能性はどれだけあるのか
このあたりを中心に見ながら探していました。
面接で「なぜ特養ですか?」と聞かれたときも、本音では「夜勤やりたくないし、もっと楽したいからです」とは答えられないので、「これまでの経験を活かしたい」と建前を使い倒しました。
ただ、実際に入職してみると
- 本当にラクな時間も多い
- 一方で、現場スタッフの“独自ルール”や“閉鎖的な人間関係”は想像以上に厄介
- 若手が少ないため、プライベートな関係になることもない
- 介護士主体の職場なので、看護師という資格だけで頼りにされる
病棟勤務に比べたら本当に楽でした。
今、特養を振り返って感じる本音と冷静な損得
私にとっての良かった点
- 夜勤のストレスからは完全に解放された
- 人生で残業が珍しいという経験をした
- 忙しくない分プライベートに余力を残せるため、その時間も容易に確保できた
- 特養(介護施設)でのキャリアアップの方法もしっかりと学んだ
- 早い段階で来たため、ライバルの少ない状況で特養のキャリアを気づくことが出来た
特養勤務のデメリット
- 続ければ続けるだけ看護師としてのキャリアは死んでいく
- 看護師の資格を“楽するための道具”にしている自分が「これでいいのか?」という葛藤
- 病棟や訪看等看護師の前線で頑張っている同期を直視できない
このようにメリットデメリットどちらもありますが、私の場合はデメリットの最後、病院で頑張っている同期の話は少しつらいものがありました。
「今後認定を受けようか迷っている」「訪看立ち上げたい」「今は心外のオペに入ってる」等々、やはり看護師としてのキャリアが死んでいく感覚は、一人で働いているときは感じませんが、たまに同期とあって話をすると厳しいものがありました。
だからこそ、
- 家庭や健康を第一に考えたい人
- ある程度“出世や専門性”を諦めてでも“今ラクに生きたい”人
こういった人には向いています。
逆に
- 病院は嫌だけどまだまだ看護師としてのキャリアを伸ばしたい
- 今後上位資格やマネジメントも伸ばしたい
- 今後転職したときのためにも、今のキャリアをここで途絶えさせたくない
こういった人が特養に来るのはまだ早いです
私の場合は30前後で特養に来て、とても早い段階で病院勤務をドロップアウトしましたが、平均年齢は私の憶測ですがザックリ50代くらいだと思います。つまり、キャリアに挑戦したうえで特養に来ても遅くはないということです。
特養でキャリアアップを目指すということ
逆を言えば、「特養で早いうちから入職する=キャリアアップのライバルが少ない」という現実もあります。年齢が若いうちからポジションをとっておけば、施設内の管理職やリーダー、主任などにも比較的なりやすいです。
ここから本音で言います。
特養で働く看護師のレベルは、ぶっちゃけそこまで高くありません。もちろん、中には優秀な人もいますが、全体的には「病院で普通」レベルの人が、特養では“できる人”扱いされるのが現実です。
しかも、特養の看護師の平均年齢は高めなので、40代から転職しても全然遅くありません。もちろん統計を取ったわけではないあくまで個人的な肌感としての話にはなりますが。
やっぱり優秀な看護師は病院に多いのが事実です。特養にもいないわけじゃないですが、「看護師としてのキャリアを伸ばしたい」と思う人なら、まずは病院で一通り挑戦してからでもまったく遅くないと思います。
そのうえで、「もう医療現場は十分かな」「あとはゆるく働きたい」と思えたときに特養に来れば、経験者として十分頼りにされるはずです。
ただし、この“キャリアアップ”はあくまで介護施設内での出世やマネジメントポジションを指すのであって、看護師としての専門性やスキルが上がるわけではありません。看護師として医療現場で活躍したい・成長したいと思っている人にとっては、明らかに方向性が違うので注意が必要です。
逆に「看護師としてのキャリアに未練はない」「今後はマネジメントや介護業界で生きていきたい」という方にとっては、特養でのキャリアアップは非常に現実的な選択肢になると思います。私自身も、そう割り切って楽に生きる方向を選びました。
まとめ
特養の看護師は、病棟と比べれば「とにかく楽」な働き方です。夜勤や残業から解放され、プライベートに余裕を持って働きたい人にとっては、間違いなく大きなメリットがあります。その一方で、看護師としてのスキルやキャリアはどうしても停滞しがちで、「自分はこれでいいのか?」と葛藤する場面も増えてきます。
私の場合、特養を選んだ理由はただ一つ、「楽をしたかったから」。
この選択が良かったかどうかは、人それぞれの価値観やタイミングによると思います。「家庭や健康を優先したい」「とにかく今は余裕がほしい」。そんな方には、特養は間違いなく現実的な選択肢です。
逆に、「キャリアアップしたい」「今後も医療の最前線で成長したい」と考えている方には、あまりおすすめできません。多くの特養は、キャリアを積んだ後の“セカンドキャリア”として選ぶ看護師も多い印象です。
どちらにしても、今の自分の優先順位や、将来どうありたいかを考えたうえで決めていくことが大切だと、実感しています。
特養は気になるけど、やっぱり看護師としてのキャリアも大事にしたい。そんな人は、まず病院で自分なりに挑戦してみて、納得したタイミングで特養に移る方が後悔は少ないと思います。特養で“できる人”扱いされるのは、ある意味で簡単です。どこで自分が納得できるか、冷静に考えるのが大事です。
次の記事では、特養を選ぶポイントを、よくある大手ブログのような内容ではない目線で書いていきます。
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