相談支援専門員になりたい、どんなルートがあるのか知りたい。
この記事では、公式制度と私の体験も交えて、相談支援専門員になるための流れを解説します。
相談支援専門員になる主なルート
相談支援専門員になるには、最終的に「相談支援従事者初任者研修」(初任者研修)の修了が必須です。
看護師の場合は、看護学校を卒業することで国家資格の「受験資格」が与えられると思いますが、それと一緒です。
この初任者研修の「受講資格」を得るために以下のいずれかの実務経験ルートを満たす必要があります。
なお、相談支援専門員自体は国家資格ではなく、またケアマネのように制度上整っているとはいいがたいので、資格や職種、業務内容や自治体によっても条件や解釈が細かく異なるので、必ず各自治体や研修要項を確認しましょう。
ややこしいので、先にざっくり何パターンか結論だけ言うと
- 看護師だったら5年以上病棟勤務後介護施設で3年働け(私のパターン)
- 介護士だったら介護施設で5年働け
- 社会福祉士持ってるなら新卒からそういった施設で働け
① 相談業務ルート
- 対象業務
障害者の保健・医療・福祉・就労・教育分野などでの「相談支援業務」
(例:相談支援事業所、障害者施設、医療機関、就労支援施設、特別支援学校などでの相談対応や計画作成など) - 必要な実務経験
5年以上の相談支援業務
② 介護(直接介護)業務ルート
- 対象業務
障害者の保健・医療・福祉・就労・教育分野での「介護等業務」
(例:障害者施設、介護施設、医療機関、特別支援学校などでの直接支援・介護・生活支援など) - 必要な実務経験
10年以上の介護等業務
③ 有資格者ルート
- 国家資格
- 医師、看護師、社会福祉士、精神保健福祉士、理学療法士、作業療法士、介護福祉士、栄養士など厚生労働省が定める国家資格
- 上記①と②の年数が3年に短縮される(ただし上記資格を活かした分野で5年以上の実務経験)
- その他資格
- 社会福祉主事任用資格を有する者、訪問介護員2級以上に相当する研修を修了した者、保育士、児童指導員任用資格者
- 上記②の年数が5年に短縮される
④ 相談支援員ルート(2024年度新設)
- 対象
- 社会福祉士・精神保健福祉士
- 流れ
- 指定要件を満たす事業所であれば「相談支援員」として勤務することが出来る
- ポイント
- 働きながら現場経験と実務年数を同時に積むことができる
- 仕事内容自体も、始まってまだ日が浅いが実質的に相談支援専門員として働くことが出来る
- 事業所側も将来の専門員確保につながるとともに、利用者確保(つまりその事務所の利益につながる)をすることが出来る
初任者研修・現任研修について
- 初任者研修は各都道府県または委託された民間団体が実施しています。
- 「対面での演習5日間」と「オンライン講義(動画視聴)2日間」がセットで、基本的には日中行われます。
- 受講費用の目安はおおよそ40,000円~60,000円(実施団体により前後/振込手数料等別途)
- 初任者研修修了後も、**5年ごとに「現任研修」**の受講が義務づけられています。
- 開催日程・詳細・申込方法は各都道府県や受託団体の公式サイトで必ずご確認ください。
- 研修枠は狭く、応募が多いため、なるべく早めの申込がおすすめです。
現場で役立つ知識・スキル
相談支援専門員として現場で求められるスキルや知識は、単なる“資格”以上に実践的・総合的なものが多いのが特徴です。主なものを詳しく紹介します。
- 医療や福祉分野での経験・基礎知識
- 利用者や家族は、障がいのある方の生活だけでなく、医療や介護に関する悩みを抱えていることが多くあります。
- 医療的ケア児の家族は医療・福祉・教育など多領域の知識を必要としています。現場経験があれば、専門用語の理解や適切なサービス選択の助言など、支援の質が格段に高まります。
- コミュニケーション力・調整力
- 相談支援専門員は「本人・家族」と「サービス事業所」「行政」「医療機関」など多くの関係者をつなぐハブ的存在です。時に意見がぶつかり板挟みになることも珍しくなく、それぞれの立場や思いをくみ取りながら、最善の着地点を探す“調整力”が欠かせません。
- 相手の話をじっくり聴く傾聴力や、安心して話せる雰囲気作りも重要なスキルです。
- 書類作成や事務処理の正確さ
- 支援の計画書やモニタリング記録、行政への申請・報告書類など、細かい事務作業も日常的に発生します。書類の不備があるとサービス利用が遅れたり、給付費の請求トラブルに発展することもあるため、正確でミスのない書類作成力が求められます。
- パソコンの基本操作や、効率的な情報整理の力も大きな武器になります。
- 多職種連携・チームワーク
- 一人で全ての課題に対応するのは難しく、他職種との連携が欠かせません。医師や看護師、リハビリスタッフ、保育士、学校や行政担当者など、多様な専門家と連携しながら“チーム”で利用者を支える感覚が大切です。
- 時には自分の知らない分野を素直に「教えてほしい」と頼む柔軟さも必要です。
- 医療資格・精神科経験の活用場面
- 看護師や医療職の資格があると、医療的ケアが必要な児童や、服薬管理・健康管理に不安がある精神障害の方へのサポートで大きな強みになります。
- 精神科勤務経験がある場合は、精神障害を持つ利用者とのコミュニケーションや家族支援などで、現場で本当に役立つ場面が多くあります。
看護師資格でのルート体験談と注意点
私自身が初任者研修の受講資格を満たした要件としては「看護師として病棟経験5年以上」+「看護師として特養3年以上」で満たすことが出来ました。
看護師の経験で本当に役立つのは、急性期の知識やアセスメント能力というよりは小児や精神障害の方と多く関わってきた経験になってきます。
知名度のある資格ではないため看護師からの転職先としてはまだまだ認知度が低く、医療的知識を持ち合わせている相談支援専門員は強味があります。
病棟でのオムツ交換や食事介助などの直接介護業務が実務経験としてカウントされるかは自治体の判断になることが多いので、必ず各自治体で事前確認しましょう。
私の場合は受講資格が認められた段階で相談支援専門員の初任者研修を受ける前に就職し、最初は先輩のアシスタント的な立場で現場に入り、研修を待ちました。
会社によっては「初任者研修を修了していないと、資格を持っていても就職不可」とする方針のところもあったので、就職先の方針もよく確認が必要です。
需要と今後の展望
初任者研修は受講資格があれば誰でも受けられ、ケアマネのような試験もありません。そのため「簡単そう」と思われがちですが、近年は相談支援専門員の質を担保するための試験導入を求める声も増えています。
ただ現状、相談支援専門員は圧倒的に不足しています。私が就職した際も、すぐに新規の依頼が入りました。
社会の多様性が認められる今、特に児童分野では発達障害などの認知度が急上昇し、ニーズは今後も減ることはなさそうです。
また、初任者研修の枠自体が少なく、受講資格があってもなかなか研修を受けられないこともあるため、早めの行動が何より大切です。
まとめ
- 相談支援専門員になるには、「初任者研修修了」が絶対条件
- 受講資格を得るルートは「相談業務」「介護業務」「有資格者」「相談支援員」など複数
- 実務年数や資格、経験分野は必ず自治体や公式資料で最新情報を確認
- 現場経験が活きやすい仕事なので、早めに経験を積むのがおすすめ
- 制度が変わる可能性もあるので、興味がある人は早めに準備を
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